みずほ銀行オンライン・システム障害について 〜 注39

公開: 2021年11月29日

更新: 2021年11月29日

注39. レビュー

複雑なシステムを誤りなく実現することは難しい。このため、設計、実現、試験などの各工程の作業が終盤に入ると、その工程の作業が適切に実施されたかどうかを、作業を実施した当事者以外の第三者が検証しなければならない。この検証作業を、一般的に、「レビュー」と呼ぶ。

しかし、このレピュー作業は容易なものではなく、作業の詳細を知らない第三者には、作業結果が妥当であるかどうかを判定するための情報が少ない。このため、レビューを担当する技術者は、作業結果から作業の実施者が想定した使用条件などを推論し、その使用条件に関する仮定が妥当であるかどうかを吟味しなければならない。

そのような作業実施者が想定した仮定を、作業結果から推論することは、高度な技能を持った技術者にも難しい仕事である。このことから、レビューされた結果の設計やプログラムには、しはしば作業時に混入した欠陥が残存する例は多い。その残存欠陥が、ソフトウェアの利用時に出現して、障害を発生させるのである。

日本社会の技術者教育では、このレビューの重要性は説いても、それを「どうやるべき」かを教えることはほとんどない。多くの場合、どのように作業を行って「結果を作り出す」かを教えることで、精一杯になっている。ここに、米国社会での専門技術者教育との根本的な違いがある。

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